2008年11月29日土曜日

Just War 3

こんばんは。

今日もまたJust War seriesの続編。

今回は、Michael Walzer (Just War Theoryの中心人物←1970s以降のJust Warの議論では結構あちこちで引用される人)の論文、Just War and Unjust Warsについて。

この中で、Walzerは、Preemptive First Strike (自衛目的の先制攻撃)もJust Warになり得ると、Israel-Egyptの1967年のSix Day Warを例に議論しているけど(下記参照)、それについて。

【状況説明 by Walzer】
①IsraelがSyriaの国境に軍事力を集結した。
②Egyptはこれに対応してSinai国境に軍事力を集結。& Syriaと共同作戦を展開する合意を結ぶ。
③その後、両軍がSinai国境をはさんで対峙する。
④Egyptはその状況(対峙)を長期間維持することが出来たけど、Israelは長期間国境に軍事力を維持することが出来なかった。
⑤持久戦になった場合、圧倒的に不利な状況のIsraelは“止むを得ず”Egyptに先制攻撃を仕掛けざるを得なかった。
⑥よって、このような自国の利益を守るために“止むを得ず”先制攻撃をせざるを得ない状況もあり得るので、Preemptive First Strikeも正当化され得る。
って。

でも:
①彼の説明だと、最初に軍事力を集結したのはIsrael。
②&③そして両者共に緊張を加速させていった。
⑤Israelが“止むを得ず”先制攻撃をしたことを強調しているけど、Egypt側の立場を考慮していないよね。少なくとも、IsraelにはIsraelとして自己の行為を正当化する理由があり、EgyptにはEgyptの行為を正当化する理由があるはず。どちらか一方が正しいとどうして言えるのだろう??と。
*更に、緊張状態が高まっている、若しくは紛争の最中に、言わば“客観的に”自分の立場が正しいとどうやって説明できるのだろうか?=>Just Warは、広くいえばPolitical Science (International Relations)の一部の研究領域だと思う。と言うことは、現在進行形の世界情勢(国際政治)の中で適用可能か?ということも重要な側面では。時間が経って、過去を振り返る形で、“いろんな情報を手に入れた上で詳細な検討をして”どっちが正しかった、と判断するのは、若干“歴史家的な”学問の分野では?と言う気がして“今の政治”に反映できるのかなって考えると結構難しいよね。

では、Preemptiveな先制攻撃はJust Warと言えないのか?と言われると、悩ましいところ。でも、殆どの場合は、Just Warに該当する可能性は低いのでは?って気がする。どちらかと言えば、“PreemptiveなJust Warもありだ”とPeace Studyの研究者が主張するのではなく、“Preemptiveな先制攻撃には、常にその正統性について高度な疑問が付きまとう(かつ当事者がその時点で正当性を判断出来る余地は限られている)ので、その行使には極めて慎重になるべきだ”(注:自分の行為をJust Warと言いたい場合に限定されるけど)と主張するのが正しい方向だと思う。

ちなみに、こんな風に考えると、今の日本のMissile Defenseは、“自分から先制攻撃をしなければならなくなる可能性”を減らすという意味で意義があるかも。島国で周りを海に囲まれているおかげで、ミサイル(たぶん念頭にあるのは北朝鮮)を除けば、攻撃を受ける可能性があるのは、海からか空から。その場合には領空/領海侵犯を待って反撃することができる気がする(知らないけど)。MDがなければ(精度にもよるけど)、緊張状態が高まった時に、相手が発射準備をしていたりしたら、Preemptive First Strikeを自衛手段として行使するべきか?って選択に迫られることになると思う。その時に、行使するって選択して、更に紛争終了後に「実は日本海とかの公海に向けた演習」だと分かったら(そう言う可能性も結構あると思うし)、自衛ではなく侵略だと非難されても仕方ない気がする。

そう言ったリスクを避けるという意味では、そこそこの意義はあるもかも。Just War的に。でも、MDが軍拡(緊張)を煽る(Russiaの多弾頭ミサイルの開発?)とか、膨大な予算をつぎ込む価値があるのか?という反対意見もそれなりに分かる気がする。それに、“そんな状況”にならないように(またなっても)、利害の対立は交渉で解決することができるようにしなければいけないと思う。個人的には、少なくとも片方が理性的であることが出来れば、武力紛争は回避できると思うけど(理想主義すぎるのかな?)。じゃあ、そもそも軍事力は不要か?いやいや現実的にそれは無いと思う。。。武力回避の交渉を成立させるためにも最低限は必要だと思う。まだ今の世界では。残念ながら。

悩ましいことだらけ。まぁ、政治学なんてそんな領域だよね。議論(反対とか賛成)が無ければ、政治なんていらないんだし。でも、“これでいいのか”って考えることが大切だと思う。

いつもながら、かなりの文量。。。まだ書きたいことは結構あるのに。まぁ、明日以降にしようか。

ではでは。またね。
Tom